三重県・鈴鹿サーキットでシリーズ最終戦を迎えた全日本ロードレース選手権。4月に栃木県・ツインリンクもてぎで開催された開幕戦を制し、チャンピオン争いを繰り広げてきた日本郵便Honda Dreamの小山知良は、その後、第7戦オートポリスでも優勝し、暫定ランキングトップで鈴鹿に乗り込んでいた。タイトルを争う岡本選手とは、僅か1ポイント差。前でゴールした方がチャンピオンというシンプルな図式となっていた。
レースウイークは、通常より1日早く木曜日の特別スポーツ走行から始まった。小山は、タイトル争いのプレッシャーも何のその、1本目のセッションからトップタイムをマークすると、金曜日の2回目までの4セッションで全てトップタイムにつけ、好調振りを見せつけた。土曜日の公式予選でも、ただ一人、2分12秒台に入れポールポジションを獲得。一方、ライバルの岡本選手は、7番手と3列目スタートとなり、流れは小山に向いているかと思われた。チームオーダーはなかったが、國峰啄磨も場合によっては、小山のサポートにまわる気持ちでいたが、國峰自身の調子が今ひとつの状態だった。それでも予選5番手につけレースに挑む。亀井駿は、岩田悟監督や小山のアドバイスを聞きながらマイペースでタイムを縮めて行き予選20番手となっていた。
木曜日から土曜日までは、いい天気に恵まれていたが、日曜日は一転し雨となってしまう。ドライコンディションでならば小山は、2番手以下を大きく引き離せる速さを持っていたが、15分間のウォームアップ走行でウエットコンディションを走ってみると、トップ争いはできるが、逃げることは難しいだろうと判断。冷静に周りの様子を見ながらライバルの前でゴールすることを考えてグリッドに向かった。
ウエット宣言のため2周減算の10周で争われた決勝。ポールポジションから好スタートを見せた小山は、ホールショットを奪い、國峰も6番手で1コーナーをクリアしポジションを上げて行く。僅か10周のレースだけに、小山の予想通り1周目から他のライダーが積極的に仕掛けて来る。タイトルを争う岡本選手もオープニングラップのシケインで小山の前に行き、小山は3番手で2周目に入って行く。これを見た國峰は、小山のペースが上がらないのかと思い、前に出て小山が戦いやすいようにしようと思ったと言う。トップ争いは、佐野優人選手と岡本選手、そこに國峰が加わり激しいバトルを展開して行く。小山は一歩引き、その展開を見守っていたのだが…。
レースも、ちょうど折り返しを過ぎ運命の6周目に突入して行く。國峰は、相変わらずアグレッシブな走りを見せる佐野優人選手とトップを争っていた。ダンロップコーナーを駆け上がり、デグナーカーブの進入でトップを走る國峰のインに佐野優人選手が入り、國峰がアウトに弾き出される形になる。國峰はコースにとどまるために減速、そこに通常の進入スピードで入ってきた小山と接触。小山は、転倒を回避するためにマシンを起こし大きくコースアウト。國峰も遅れてしまう。この、まさかのアクシデントで小山は12番手までポジションを落としてしまい、國峰も9番手となってしまっていた。
タイトルの可能性が、ほぼ消滅してしまった小山だったが、最後までレースを戦い10位でチェッカー。シリーズランキング2位で2018年シーズンを終えた。國峰は8位、亀井は他車と接触しコースアウトしながらも21位でゴールしている。
小山知良コメント
「チャンピオンのかかった重要なレースでしたがドライでは全セッショントップタイムで14年振りのポールポジション。ウエットコンディションとなったレースでも落ち着いて様子を見ながら周回を重ねていたのですが…。あらためてレースは難しいということを思い知らされました。来シーズンは、もっと強い走りができるように精進します。日本郵便さんを始め、応援していただいた全ての皆さんのおかげで無事に全日本ロードレース選手権を戦い終えることができたことを感謝いたします。本当にありがとうございました」
國峰啄磨コメント
「予選までは、なかなかうまくライディングできず苦労していましたが、決勝日が雨になり、ウエットコンディションでは、いいフィーリングを感じていたので、小山選手がタイトルを獲れるような動きができればいいなと思っていました。序盤は、小山選手のペースが上がらないのかと思い、トップに出てレースをかき回そうと思っていたのですが…。今シーズンは、小山選手と一緒のチームで走ることができたことで、まだまだメンタル面や技術面で足りないことがあることが分かりましたし貴重な経験になりました。日本郵便さんを始めスポンサーの皆さん、応援してくださった皆さん、そしてチームに感謝いたします」
亀井駿コメント
「小山選手や岩田監督、手島代表のアドバイスのおかげで少しずつですが自分なりにステップを踏んでタイムアップすることができていたので、シングルフィニッシュを目標にレースに臨みました。14番手まで上がったところで他車と接触してしまいコースアウト。そこから追い上げましたがポイントも獲ることができず最終戦を終えることになってしまいました。まだまだ未熟な点が多いことを痛感したシーズンになりましたが、この経験を生かしていきたいと思っています」
手島雄介代表コメント
「日本郵便さん、Hondaの皆さんを始め、多くのご協力感謝いたします。チャンピオン獲得をかけて臨んだ最終戦でしたが、残念ながら勝利の女神は微笑んでくれませんでした。それでもライダーはもちろん、チームスタッフもチャンピオンを獲るためにチャレンジしましたし、全力を尽くした結果なので、これもレースということなんでしょう。また、チャンピオンが獲れるようにトライして行こうと思っています。2018年シーズンも応援ありがとうございました」
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